すずききよしの音楽日記22

「てのうた」の取り持つ不思議な縁

「てのうた」は1985年夏、岸和田障害者共同作業所の職員
   や役員の皆さんが「すずききよし 愛と平和のコンサート」を「マドカ
   ホール」を満席で大成功を収めたことに、お礼の気持ちで作った
   歌でした。
    明るくて、リズミカルで楽しい歌なので、大人にも子供にも好か
   れるこの歌は、実は手話と一緒に出来た歌なのです。
    私の長男・鍛(きたう)が、手話サークルにで覚えたばかりの手
   話で教えてくれたものです。
    私もコンサートの度に各地で歌ってきましたが、大阪の障害児
   教育に熱心な先生が、この歌をとても愛して下さって、広めてく
   ださったり、幼稚園や、保育園の保母さん(現在は保育士)たち
   が、子供たちにお遊戯のように手話と一緒に教えてくれています。
    そして、何時の間にか全国的に広がっています。
   お話はここからです。
    10月中旬のある日、一通の電話がCAM の事務所にかかって
   きました。
    「30年くらい昔、ミュージカル劇団カチューシャで,すずききよし先
   生に教わったノカと言うものですが、30年ぶりに日本に帰国したら、
   孫がとてもいい歌を歌ってたので、尋ねると「てのうた」だとの事。
    早速、日本音楽著作権協会で調べると「すずききよしの作品」だと言
   うことで懐かしくなり、電話番号を調べてかけてきたそうです。
    「電話で一別以来の話の後、11月9日,東京・中央区の「福祉まつり」
   で、孫たちがステージでみんなで『てのうた』を手話つきで歌うとのこと、
   招待するからぜひ上京しませんか」
    福祉まつりのステージでは、東京芸大の学生たちの金管クインテット
   の後に可愛い子供たちが沢山ステージに上がりました。
    そして元気一杯「てのうた」を金管クインテットの伴奏で歌いました。
   その後、司会者に紹介され、私もステージに上がり、もう一度会場の
   お客さんと一緒に手話をしながら『手の歌』を歌いました。
    ノカさん事、宮島さんは、ミュージカル『タンポポの花の咲く時』では、
   歌って踊るスターでしたが、当時はまだ東大在学中だったそうです。
    その後、オックスフォード大学に進み、学位を得て、オーストラリアの
   シドニー大学で20数年間教授を勤め、2,3年前に帰国し、いくつか
   の大学で講師をしながら、ボランティアで、NPO「信頼」と言う障害者
   支援活動をしているそうです。
    ある学者が、『世界で最も短い進化論の歌』と評した「てのうた」に
   また新しい広がりが出来ました。