[HOME][椿のページ]>・椿を楽しむ―日本種ツバキ
  1. 花形
  2. 花柄
  3. 花の大きさ
  4. 雄しべの呼び方
  5. 花弁の呼び方
  6. 葉の形状と特徴
  7. 樹形
  8. 地方のツバキ
1.花形

+++一重咲き+++

野生のツバキの花弁数は6枚前後ですが、園芸上は8枚までを一重という。一重は花弁と雄しべの形状によって多様な花形になり、また花形は咲き始めから落花までに変化をする。

・猪口咲き(ワビスケ咲き)

極小輪の呼称で、キキョウ、筒、ラッパ咲きなど、広い花形が含まれる。

(乙姫、白侘助、胡蝶侘助など)

・キキョウ咲き(剣弁咲き)

弁端が強く中折れし、上からは星型に見えるもの。

(以津の夢、宮雀など)

・抱え咲き

弁端が内曲するつつましい形のもの。

(大日の曙、玉霞など)

・筒咲き

咲ききってもV字形の近いもの。

(大仙白、紺侘助、一休など)

・ラッパ咲き

咲ききると、弁端が大きく反曲するもの。

(抜筆、貴婦人、隠れ磯、逆さ富士など)

・椀咲き(玉咲き)

花底が丸みを持ち、全体にお椀形をしたもの。

(曙、加茂本阿弥など)

・平閉咲き

花弁が平たく全開するもの。

(花見車、肥後日本錦、熊谷など)


+++一重以外の花形+++

ツバキの花弁は八重化し、雄しべが小花弁に変化しやすい形質を持っている。 一重以外の花形では、こうした外弁と内弁や雄しべとの複雑な変化を分類したもの。

・八重咲き

花弁数が9枚以上あり、正常な雄しべのあるもの。

(蝦夷錦、唐錦など)

・蓮華咲き

内外互いの弁間が大きく透いて、立体感のあるもの。

(春の台、都鳥、羽衣など)

・唐子咲き

花芯の雄しべや葯が、形の良い小花弁になって花芯に並んだもの。

(卜伴、紅唐子、白唐子など)

・二段咲き(櫓咲き)

花の内側にもう一つ花を重ねたように見えるもの。

(花車、源氏車など)

・牡丹咲き

大小の花弁と雄しべが、花芯部で混じり合ったもの。

(光源氏、酒中花、淀の朝、京牡丹など)

・獅子咲き

大小不規則な花弁に、雄しべが見え隠れするもの。

(荒獅子、大神楽、白拍子、初時雨、南蛮紅など)

・千重咲き

花弁が幾重にも重なり、雄しべが見えないもの。

(乙女椿、紀州司、菊冬至、染川、オランダ紅など)

・宝珠咲き

花芯この花弁が互いに硬く抱き合ってほぐれず、玉をつくるもの。

(崑崙黒、越の麗人、宝珠、玉手箱など)

・列弁咲き

花弁が6つの放射状やラセン状に並んだもの。

(綾子舞、津川絞、蓮見白、越の粧など)

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2.花柄

・絞り

絞りや覆倫のできる仕組みは、突然変異を生じ易い遺伝子(易変遺伝子)をもつ品種が、花弁の成長過程で、白花の中に部分的に紅の色素を作るため。

例えば、若い花弁の分裂時、早い時期に遺伝子が働くと大き縦絞りとなり、遅い時期になって働くと吹掛け絞りになる。

現れる紅の条斑の大きいものから、縦絞り、小絞り、吹掛け絞りの三つ分けている。

生物学的にはキメラと呼ばれ、遺伝的な現象である。キメラとは、ギリシア神話に出てくる架空の動物、怪獣キマイラの名から。

絞りの現象が、色素を持った組織と、持たない組織が混じり合って出来ているという意味で、この言葉が用いられる。

絞りの発現する仕組みはサツキの花柄と同じで、異変遺伝子によると考えられている。

・斑入り・白斑

星斑(ほしふ)、雲状斑(うんじょうふ)、横杢斑(よこもくはん)をまとめて斑入りともいう。

斑入りはウィルスの感染によって生じ、たいていは斑入りの台木に接ぎ木したことで転移します。感染部には紅の色素ができないので白くなるのですが、白花では感染していてもわからない。

白斑は病気というより、花色に変化をもたらしてくれた天の恵みです。これによって木が衰弱することはない。

また、花に白斑が入るものは、葉にも周りのぼけた淡黄色のウィルス斑絞が現われ、斑葉病と呼ばれている。枝全体が黄化しない限り放置してかまわない。

・紅覆輪と白覆輪

覆輪は周縁キメラといわれ、絞りの一種と考えられている。

白覆輪、紅覆輪、底白があります。

覆輪花はいずれも美しく、観賞価値が高い。

王冠や隠れ磯は園芸種の枝変わりから、桐ノ尾は園芸種の実生から生じたもので、興味、関心のある人なら、誰でも発見・作出のチャンスはある。

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3.花の大きさ

花の大きさは、開花時の花の直径で示し、日本では以下の五段階で表している。

(欧米式では、極小輪は6cm以下。)

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4.雄しべの呼び方

雄しべの形と色はツバキの観賞上重要視されるため、細かく分けられ、それぞれ名前がつけられている。

・閉じ芯

葯(花粉袋)が互いに固くくっついて離れず、先端が砲弾形に尖るものをいう。観賞的には先細りで、筒の純白のものが美しくて好まれる。

・ユキ芯

野生型のユキツバキ系品種に特有のタイプで、梅芯に比べて花糸は細くて濃黄色を呈し、長短入り混じる。

・輪芯―わじん

筒しべが太く短く、葯が一列に輪状に並ぶものをいう。

・梅芯―ばいしん

肥後ツバキに特有のタイプで、花糸が太くて長く、放射状に全面に散開するものがよいとされている。熊本では花糸の太さによって、太いものからもやし芯、並芯、糸芯などと区別するほど、花心を尊重する。

・侘芯

雄しべの葯が退化・変形したものをいい、太郎冠者の実生と、ヤブツバキやユキバタツバキなど、一重の花の突然変異からできる。

このような侘芯変化が起こると、同時に花は小さくなり、花期が早くなって、春咲きが秋〜冬咲きになる。

古くからある胡蝶侘助、白侘助、数奇屋などのワビスケ類はいずれも侘芯で、同じような小輪化と早咲き性を身につけており、太郎冠者起源の品種と推測している。

従って、ワビスケツバキとは「侘芯の一群を指す」という考え方が妥当性があり、支持されている。

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5.花弁の呼び方

花弁は咲きはじめから散るまで、いろいろと変化を見せ、その変化の様子を静かに眺めるのは、これを育てたものにとって大きな楽しみである。美しい形状については二、三の名前がついている。

・剣弁

左右の弁縁が内曲するか、中央部で樋状に折れるために、弁端が尖ってみえるもの。これが全体に及んだものをキキョウ咲きというが、ピリーッと締まった美しさがあって人気が高い。

・爪折れ弁

開きぎみの花弁のまま弁縁が内曲したもの。千重や八重咲きの花弁全体に及ぶと、立体感のある素晴らしい花に見えるが、時に樹勢の衰えた花にも出る。

・中折れ弁

樋状弁、樋形弁、刳り形弁、龍骨弁などともいわれ、花弁が縦方向に対して横に中折れした様子のもの。八重咲きの花弁全体に現れると、蓮華咲きと呼ばれる華麗な花形になり、日本ではこのタイプのものに人気が高い。

・旗弁―はたべん

雄しべの一部が弁化して立ち上がった小花弁をいう。ときに弁縁に葯の退化したものが付随する。

・兎耳弁―とじべん

牡丹咲きの洋種ツバキに多く見られるもので、大きい旗弁がウサギの耳のように立上がり、多くは中折れ状になるものを指す。

牡丹咲きの洋種ツバキに多く見られるもので、大きい旗弁がウサギの耳のように立上がり、多くは中折れ状になるものを指す。

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6.葉の形状と特徴

元気な枝の先端より三枚目ぐらいの葉について、次の要領で観察するとよい。

・どんな形をしているかを見る

大体、次の六つの形に大別できる。

  1. 広楕円形(加茂本阿弥、臘月など)
  2. 楕円形(通鳥、乙女椿など)
  3. 長楕円形(紅侘助、紀州司など)
  4. 卵状楕円形(大白玉、日の丸など)
  5. 倒卵形(眉間尺、太神楽など)
  6. 披針[ひしん]形(孔雀椿、百合椿など)

・平坦か、よれているかなどの形状を見る

大体、次の五つの状態にまとめられる。

  1. 平坦である
  2. 葉縁が外曲する
  3. 波曲する
  4. 主脈に沿って中折れする
  5. 全体にゆるく反曲する

・葉脈の鮮明さ、陥没、隆起の程度を見る

この見極めは品種判定にかなり重要である。 例えば、初嵐(嵯峨)の葉は網脈まで顕著に陥没するが、初嵐(白玉)は浅くてやや不明瞭に陥没するので、花のない時期でも両者の区別はしやすい。

・鋸歯と葉柄をみる

鋸歯は粗いが細かいか、鋭いか目立たないか、葉柄は長いか短いか。また、両側に短毛があるかどうかなどはヤブツバキ系とユキツバキ系の判断の一つになる。

・ヤブツバキ系品種

鋸歯は波状で尖らない。葉脈穂網脈が不明瞭。葉柄は長くて無毛。

・ユキツバキ系品種

鋸歯は鋭くて尖る。葉脈は葉脈まで明瞭、葉柄は短くて短毛有り。

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7.樹形

一般にヤブツバキやヤブツバキ系の園芸品種は立性(たちせい)で、年数を経ると高木になり、ユキツバキやユキツバキ系の園芸品種は矮性で、株元から叢性(そうせい)する性質がある。

これは遺伝的なもので、これらの樹形を大きく変え、それを維持するには大変な努力が必要になる。

しかし、ツバキに限らず樹木は、摘心、剪定などによって、ある程度は形を変えることもできる。特に立性の品種を幼木時に摘心すると、横枝が発達して横張りになる。

また、横張りの品種は下枝を除いたり切り詰めたりして、主幹だけを伸ばすようにしてやると、直立して立性のようになる。

庭木として育てる場合、これらの性質を心得ていると植え場所の選定や、整枝などにも役立つ。

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8.地方のツバキ

・江戸のツバキ

三大将軍秀忠が全国から徴収したものと、諸大名が江戸に造営した上・中・下屋敷の作庭に自分の領土内から名椿を移し植えたものが基本となっている。

ツバキのすべての花形を網羅している。

(春の台、碁石、鶏の子、迦陵頻、卜伴、オランダ紅、白唐子など)

金魚葉、桜葉などの、葉の面白い品種もある。

・京のツバキ、関西のツバキ

京都周辺の神社仏閣の庭には銘椿が多く、ツバキ文化の発祥の地にふさわしい。

(五色八重散椿、日光椿―紅唐子、白角倉、胡蝶侘助など)

平安時代以後、変異の大きなユキツバキが、北陸からの経由で導入されて多彩な品種群が生まれた。

関西の名花としては、菱唐糸など。

・中部のツバキ

三河地方、鈴鹿連峰中部は茶道の盛んなところでツバキの好みも茶人好みの一重筒咲、椀咲が主体。

尾張のツバキ―江戸時代より名古屋を中心に育成された品種群。

特徴は一重、筒咲き、または抱え咲き、椀咲き、小〜中輪、早咲きの茶花向き品種。

(関戸太郎庵、窓の月、紅妙蓮寺など)

また名古屋らしく華麗で豊満な品種もある。

(大城冠など)

隣接する三河、美濃、伊勢のツバキを含めて中部のツバキと呼ばれている。

・山陰のツバキ

「ツバキのふるさと」といえるほど自生の多い地域で、古くから多くの美花が選抜され、特に17世紀、松江城が築城されていからは、松平不昧(ふまい)公の影響か、数々の銘椿が出雲地方に集められた。

萩から松江にかけて、清楚な一重小輪の名花が特別愛されているのも特徴である。

(花仙山、意宇の里、角の光など)

・加賀のツバキ

北陸地方で誕生したユキツバキ系の品種の京都への中継地として、この地は園芸の隆盛に大きな役割を果した。

茶の湯の盛んな土地柄、茶花向き品種が盛んに育成され、旧家の庭から幾多の名品種が登場している。

(西王母、ことじ、祐閑寺名月など)

・富山、新潟のツバキ

ユキツバキの自生地であることから、その変化に富んだ選抜品種やヤブツバキとの交雑によるユキバタツバキ系の園芸品種が古くから栽培されてきた。

裏日本のツバキ―山地にユキツバキ、海岸地帯の低地にヤブツバキが自生し、中間地帯にヤブバタツバキがある。

また、氷見市老谷の「さしまたの椿」のようなヤブツバキの巨木も多数残されている。

(大日の曙、千鳥鶴、栃姫、雪白唐子など)

・肥後ツバキ

独特の園芸文化を発展させて熊本では、ツバキも庭木とは別に、鉢植えや盆栽としての楽しみ方が流行した。

江戸時代の宝暦年間(1751〜1763年)に、藩公の庇護のもと「梅心一

重大輪」という華麗で豪快な品種群が生まれた。

細川家中の同好の士が集まり、椿花連を結成、今日にみる独特な一重の花全面に雄ずいが散開する男性的な花形を完成した。

(肥後大和錦、王冠、肥後長寿楽、朱光の月など)

・久留米のツバキ

古くから園芸の盛んな地でツツジとともにツバキの栽培も盛ん。

肥後藩がツバキに力を入れ始めた頃とほぼ時を同じくして、享保15(1730)年久留米藩主、有馬公が産業復興のために奨励したことに始まるといわれる。

代表花、正義―まさよし、は名花中の名花で、幕末期にシーボルトがヨーロッパに持ち帰り、ドン・ケラリーとしてかの地でも人気を博し、されにこれからビル・ド・ナントなどの名花が作出された。

(正義、月の輪、このみ白など)

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last updata:2005/07/12